金
16
4月
2010
エニアグラムとは何かという話を続けます。
(いろいろな角度から書けるので、話が尽きません。)
今日は、歴史の話を少し補足します。
エニアグラムのルーツは、特定の人や思想に属するものではありません。
古代エジプトから現代の心理学に至るまで、その間のさまざまな思想や
理論が取り入れられ、現在のような形になりました。
エニアグラムは、元々は性格分類ではなく、
宇宙の数学的法則性や象徴的意味を「図形」で示したものでした。
たとえばエニアグラム図を構成する主な要素には、円(全体、一なるもの)、
三角形(3つの力の相互作用)、変六角形(プロセスの変化と進展)があります。
この図形に示されている主な考え方は、
ピタゴラスやプラトン(紀元前4〜6世紀)、新プラトン学派(3世紀〜)など、
古代ギリシャの思想からきているといわれます。
つまり、2、500年ほどの歴史があることになります。
新プラトン学派の創始者とされているプロティノスは、
『エネアデス』という著書の中で、
「人間にも見出される9つの神聖な特質」について語っています。
そして「9つの神聖な特質」の対極になるものがキリスト教に入り、
「9つの大罪(怒り、プライド、妬み、ためこみ、貪欲、欲望、
怠惰、恐れ、欺き)」となりました。
実はエジプトには、もっとも古いキリスト教の修道院がありますが、
聖アンソニーが埋葬された地に建てられています。
聖アンソニーは、「砂漠の教父」のひとりでした。
彼らは初期のキリスト教徒であり、イエスの砂漠の中での断食にヒントを得、
自然の中の隠遁生活を重んじた人たちです。
リソ&ハドソンによれば、彼らは、人間が聖なる本質を失い、
自我意識にとらわれてしまう「大罪」について集中的に取り組んでいました。
ギリシアからエジプトに彼らが旅する中で、「9つの大罪」が
「7つの大罪(怒り、プライド、妬み、ためこみ、貪欲、欲望、怠惰)」
に減ったといわれていますが、その理由は謎のままです。
「9つの大罪」という考え方は、後に性格分類としてエニアグラムが
確立された際に、「9つのとらわれ」として取り入れられています。
キリスト教の「大罪」とは、罪そのものというより、人間を罪に導く
可能性がある欲望や感情を意味します。
エニアグラムにおいて人は、性格タイプ別にこうした9つの「とらわれ」
のどれかを、繰り返す根深い感情のパターンとしてもっていると考えます。
一方、ユダヤ教の流れを汲みながら、新プラトン学派の影響も強く受け、
12〜14世紀にフランスやスペインで発展した「カバラ」という思想が
あります。
カバラの哲学の中心には、「生命の樹」と呼ばれるシンボルがあります。
それは10の要素からなり、ひとつは「神の意識」ですが、それ以外の9つは、
人間の9つの「魂の輝き」(叡智、理解、恩寵、美、力、永遠、輝き、基盤、
存在)を表すといわれ、これが後にエニアグラムの9つのタイプのそれぞれと
関連づけられました。
こうした一連の歴史的背景は、「人間には9つの特質があり、
それには光(魂の輝き)」と影(とらわれ)の両面がある」という
エニアグラムの基本的な考えにつながっています。