月
19
4月
2010
前回までのブログでは、ごく簡単に歴史をふりかえってみましたが、エニアグラムは、さまざまな思想の影響を受けつつも、基本的には人間についての普遍的な真実を扱ったものであると考えられます。
そのため、人の心の動きや、より統合されたあり方(成長した姿)、
自分をつき動かし、可能性を制限してしまう「とらわれ」といったことについて、
文化を超えた普遍の考え方を明らかにしているのです。
エニアグラムの考え方の中には、キリスト教の「大罪(とらわれ)」の影響も
ありますが、仏教との関連も興味深いものです。
たとえばリソ&ハドソンの考え方では、本能タイプ(タイプ8・9・1)、
フィーリング・タイプ(タイプ2・3・4)、思考タイプ(タイプ5・6・7)の
それぞれの感情的課題は、怒り、恥、不安となっています。
仏教ではもっとも根本的な3つの煩悩として、「三毒」というものがあります。
「貪・瞋・癡(とん・じん・ち)」です。
これは、「むさぼり、怒り、真理に対する無知の心」です。
怒りは本能タイプ、無知はフィーリング・タイプ、むさぼりは、
思考タイプ特有の問題と考えられるかもしれません。
なぜ「無知」がフィーリング・タイプかというと、フィーリング・タイプは、
別名で「イメージ・タイプ」ともいわれ、ものごとをあるがままに見るのでは
なく、自分が投影したイメージを通じて認識するという問題をとくに抱える
からです。
また、むさぼりは、外に知識を求めるという意味で、とくに思考タイプと
結びつけて考えることができます。
さらに、仏教との関連でいうと、リソはエニアグラムの中で初めて、
「9つのレベル」という考え方を導入しましたが、仏教の中にも「九品」という、
似たような考え方があるのは興味深いことです。
実は歴史的にも、エニアグラムの源流と仏教が出会った可能性があります。
エニアグラムの源流と関係するといわれるネストール(ネストリウス)派の
キリスト教が唐に伝えられ、寺院が長安にあリました。それから約150年後、
空海が長安に入ります。
ここでエニアグラムと真言密教が出会った可能性はあります。
(ちなみに、高野山の奥の院に、ネストール派の碑があります。)
エニアグラムの歴史の中では、仏教との接点は語られていませんが、
実際の出会いはともかく、人間の心の根本を見つめる東西の宗教において、
共通の基盤があったとしても不思議ではありません。
さらに現代において、リソ&ハドソンを中心とする心理学的研究において、
エニアグラムの普遍性は、文化を超えて証明されています。
そのため、9つのタイプについても、文化を超えて見出され、
活用することができるのです。